暴走した可愛さの中毒性
可愛いのが前提条件であるアイドルにとってみれば、その振り幅を上限超えする試みは、アピール手段として最良の選択であると同時に、鬱陶しく思われてしまい兼ねない諸刃の剣でもある。
いわゆるアイドルらしいアドバンテージなのは確かだが、キャラが定着するほどに執拗なイジリに遭いその都度、絶妙な返しを要求されるという、相応の対応力まで試される側面があるのだ。
かつて僕は、「ももち」としてバラエティで人気を博した、Berryz工房の嗣永桃子に傾倒していた時期がある。普段の立ち振る舞いから握手会のファン対応まで、全てにおいて完璧なキャラ作りを貫き通した数少ない一人である。
中学生の時分より自らの立ち位置を理解し、行き過ぎたあざとさでキャラを確立していった。空恐ろしいまでの覚醒された能力と、ファンの心を掴んで離さない人心掌握術に大いに畏怖し、「怪物」とまで言わしめた存在感を今なお回顧するほどだ。
(参照:ももち論 永遠の炎)
そうした経緯から、ハロプロから坂道に移行した現在でも、あざとさを特徴とするメンバーに魅了され推しにしている節がある。
乃木坂46では、一ノ瀬美空。本来は、プロ野球好き、真面目で泣き虫の一面もある久保史緒里が好みで推しメンとしているが…実は、一ノ瀬の愛嬌の良さ、あざとさも気になっていた。ただ、あまりにも特殊な性癖?というか変態っぽさが行き過ぎており、やや抵抗感があったか。
同期先輩も構わずお尻を触りまくる、溺愛する小川彩の匂いを嗅ぎながら首を絞める、齋藤飛鳥の足にしがみつく等々、数え上げたらキリがない変態エピソードの数々。この特異なキャラを愉しみつつ、控えめに推していきたい気持ちは十分あるが、6期が加入してから更に年下に対し暴走しないか心配である。
櫻坂46における推しメンは守屋麗奈であるが、3期の石森璃花も後に推すようになった。共に、ぶりっ子を自認するほどキャラの定着度は高いが、ややその特性には違いが見られるようだ。
守屋は半養殖と呼ばれ、本質的なキャラに肉付けするタイプである模様。コツコツやれなぁごっこ、メルヘン独り言など、アピールに事欠かないが、必殺技を先輩メンからパクる、ラヴィットにて小芝居で電流椅子から逃れる等、狡賢さも小悪魔的要素として併せ持っている。
一方、石森は完全な天然型。加入当初から同期も認める乙女キャラであり、可愛い身振り手振りが出てしまうのは守屋と同様で、色恋沙汰にも目がない。とりわけ、的野美青の男前キャラ?に魅了される辺り、かなりガチっぽくて、まんま恋する乙女を露わにしてしまうのは流石である。
日向坂46では一見して、そうした系統が見当たらないように思われたが、一人凄いのが居るのを忘れてた。
4期の宮地すみれ。彼女が唯一かどうか分からないが、完全に計算されたタイプのノリノリのあざとキャラということが出来よう。元々、フワフワした雰囲気はあったが、渡辺莉奈にモノマネされ話題になったのがきっかけで、オードリーやメンバーにも弄られるようになった。
ボイス入り目覚まし時計の企画案にて、時間毎の告白ボイスを無茶振りされたところ、全く物怖じせずに見事な三段落ちにもっていく辺り、相当な強者である。自らの本質を隠すことなく曝け出し、且つ完璧に「作って」しまうところが、往年の嗣永桃子を見るようで空恐ろしい心境にさえ陥ったのだ。
アイドルが誕生するにあたり、必然として生じた感のあるぶりっ子のキャラクターイメージ。可愛さをオーバードーズすることの弊害は筆舌に尽くし難いが、その非情なる中毒性により脳内麻薬が大量分泌されること請け合いである。
文字通り、現実逃避する為に夢の中を漂い遊ぶ嗜みが、アイドルに執着し応援する推し活の類いだといえる。ただひたすら可愛さにやられ、狡猾な戦略に嵌るのなら、それこそ本望であろう。非現実を誘う狂乱に身を任せ、溺れ昇天するのが唯ひとつの目的なのだから。
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