« さくら学院の新戦力 | トップページ | 仮想世界で形作る理想像 »

2019/06/06

命の重さと直面した問題を考える

例の殺傷事件など見ていると、命というものを考えさせられる。報道の仕方や現場に山積みになっている花束など、子供が巻き込まれた事件の扱いをとっても、いかに大きな影響を与えているかが分かる。

遠方から来て花を捧げ、涙すら流している人々への違和感。殺された子が可哀相というが、病気で苦しんで死んでいく子も沢山いるし、それを言い始めたら全ての死人が可哀相である。赤の他人が死んで泣いている自分に酔っているのだろうか。理解し難い行為だ。
冷たい考え方に思われるかも知れないが、死とは全て同一のものである。病気で死のうと、事故で死のうと、誰かに殺されたとしても、死は単なる死でしかない。死者の為に出来ることなど何もない。どんなに花を手向けようが、盛大な葬式をあげようが、それは残された遺族を慰めるものでしかないのだ。
もしも、僕がこの事件現場の近くに住んでいたなら、通りがかりに、そっと手を合わせるくらいはしただろう。事後処理の手間を考えたら、花など手向けるべきではない。ほんのわずか、気持ちを添える。その程度で十分だと思う。

これが子供でなく、老人だったらどうだろうか。世間から忌み嫌われる無職中年男だったらどうだろうか。マスコミは大して取り上げないし、花を捧げて手を合わせる人も少数の物好きだけに違いない。
要するに、人の命にはそれぞれ重さがあるのだ。未来ある子供の命は重く、先のない老害や社会のお荷物の命など軽いに決まっている。
誰も公の場で一切口にしないが、これが誰しも思っている真実なのである。いうまでもなく、ごく当たり前の認識となっているはずだ。

犯人に対しての「独りで死ね」という発言に関し、賛否両論があり議論が盛んになっていると聞いた。
命が大切だ、殺されて可哀相と言っておきながら、一方では犯罪者の命は軽んじている矛盾が生じている。というよりも、あの発言は引きこもりで自殺を考えるほど悩んでいる人達に向けられたものと理解している。尚更、たちが悪いだろう。
就職氷河期世代、僕なんかもそれに該当し、非正規の仕事で日々の生活は苦しい。時に仕事の空白期間もあり、そんな時期は引きこもりがちになる。それだけに、僕は自分が「死にたきゃ勝手に独りで死ね」と言われた気がした。
別にいわれるまでもなく、僕は独りで死ぬつもりだし、誰かに迷惑をかけるつもりもない。だからといって、声を大にしてそう言われたら、嫌な気分になるし不快感しかない。もっと深刻な状況に置かれている人であれば、大いに腹を立てるかも知れない。

要は、切捨ての解釈なのである。社会の寛容さが欠落した故の自己責任論で、中高年引きこもりの問題を回避し続けてきた。その負の側面が、次第に露呈してきたのだろう。
犯人の家族は、14回も役所に相談に訪れていたという。明らかに困り果てているのが分かるのに、ようやく出した答えは「手紙を書け」である。恐らくは内容や文言に関する注意事項もなく、素人の思いつきのようなものと推測される。
結果、手紙の中の「引きこもり」という文句に逆上した犯人が、これをきっかけに犯行に及んだ可能性も取り沙汰されている。社会の冷徹な対応が、こうした事件を引き起こしたというわけだ。

危険地帯と知りながら赴いて、テロリストに捕まる。いわば、こうした類いの自己責任とは種類が違う。
最初は誰でも頑張ったし、より良い方向へと向かうはずだった。しかしながら、人間関係や体調不良、リストラなどに悩まされ、心ならずも引きこもりになった人が大多数であろう。そうした人達にまで自己責任論を押し付け、救済しない社会。これが正しいと思う方が、よっぽど異常である。
本当に悩みを抱えている人がいれば、積極的に関わって解決していく制度が必要だし、企業も再就職をもっと支援するべきだと思う。
人手不足だから外国人ではなく、就職したい日本人がいるなら、年齢や経歴を問わず雇用していくべきだ。そして当然、正規雇用にしていくのが望ましいが、非正規であったとしても、待遇改善が必要なのはいうまでもない。先進諸国においても、これほど非正規が虐げられているのは恐らく日本だけだろう。

命が平等というのであれば、それぞれの人生も平等に希望あるものでなければならないはず。
子供が死んで可哀相と泣いている場合じゃない。置き去りにされた大きな問題を今一度よく考え、こうした凄惨な事件が二度と起こらないように根本的な策を練る必要がある。それは警備員を増やすとかでなく、高齢引きこもりへの抜本的対策に他ならない。
子供が可哀相と泣きながら、独りで死ねと罵る人々には、虫唾が走るような嫌悪感しか感じない。いい加減、綺麗ごとは止めにして、今ある問題を直視し、良識ある社会を形成していくために何をするべきなのか。全ての人に真剣に考えて頂きたい。

|

« さくら学院の新戦力 | トップページ | 仮想世界で形作る理想像 »

コメント

こんにちは。
全くその通りです!
よく「人手不足」と言いますが僕には信じられません、ブラック企業を野放しにした結果たくさんの人が心や体を壊され働けなくなり、女の人は未だに寿退社を強要され、妊娠すればマタハラ。国が介護問題を棚上げした結果介護離職の増加・・・人が居ないからと老害を延長雇用し、安く使い捨ての外国人を受け入れる。1億総活躍とか訳分かんないこと言ってますけど何なんですかね?
結婚しろとか子供作れとか、仕事で追い詰められ余裕も無いし、共稼ぎじゃなきゃ生活出来ないのに保育園にも入れない無茶苦茶です。
もう個人の努力がどうにも出来ない状態なのに自己責任。子供が死ぬと可哀想だって言うけどその裏で保育園の建設には反対する。
昔日本は死者にはそれなりに優しい国だったと思うんです、戦犯とかだっていろいろあったにせよ国の為に死んだ訳でそんなに冒涜はしなかったのに今の日本はみんな心に余裕が無いせいで他者(弱い者)を攻撃する群衆心理みたいな正直気持ち悪いです。
僕の中では事件を起こす人と普通の人は同じだと思っています、普通の人だって気の迷いや何かの悪いことが重なって犯罪者になるかも知れないし。
今の日本は寛容性が無くなり生きづらい息が詰まる世の中になってます。何とかならないものですかね・・・これからはフリーターが始まった世代の人達が無年金で老後を迎えます、そろそろ本当に国が動き出さないと間に合わないのに、経済的に中国に負けて転落し始めてるのに誰も立ち上がりませんね。
僕も派遣を経験したことありますけど、心が荒むというか・・・休んじゃいけないし、突発の時は派遣会社に連絡して、派遣先にも連絡するとか訳分かんないルール押し付けられるし、ただピンはねしてるだけ。
映画の「吉原炎上」で女郎の人が自殺する時に言うセリフで自殺する自分を取り囲んでるその街で働く群衆に「お前ら女郎の上前はねて生きてるくせに」まさにあんな感じです。
もう2度と派遣は嫌だ。。。そう思ってましたが今は下請けで元請けの所で働かされてるので派遣ですw下請けはどんなに頑張ってものし上がれる訳でもなく、何をしても叩かれ、しなくても叩かれます。本当虚しいことしかないです。
そんな酷い境遇だからこそ、美しいものに心惹かれるのもかも知れないです

投稿: 館の主 | 2019/06/09 23:55

誰もが余裕がなく心が荒むことで、寛容でない社会が生まれているとのご意見に同感です。
企業が利益のみを求めるが故に人を人と思わない資本主義社会の弊害もあるでしょうし、やり直しのきかない社会構造がもたらした格差の問題もあるかと思います。
どんな社会でも、金持ちとそうでない人が居ても良いとは思いますが、あまりに開きが大きくなったり、最低限の生活さえ脅かされるようなことがあってはなりません。中流より上の層は放っておいても構わないのですから、底辺で頑張っている人達を底上げするような施策を政府には望みたいものです。

僕も派遣は散々やってきましたが、まさに現代の奴隷制度ですね。
名前を覚えてもらったことはないし、トラックの荷台に乗せられて現場まで運ばれたことまであります。まるで人間扱いされず、過酷な重労働で時給千円いかないことさえありました。
思えば、小泉政権の構造改革以前の方が、ずっと良かったかと。直接雇用のアルバイトの方がまだ扱いが良かったし、派遣ほど酷い使い捨てはされなかったと感じています。
困っている人がいれば助ける、底辺で頑張っている人を正当に評価する。そんな当たり前の認識が、世間に浸透することを願う他ありません。

投稿: santa | 2019/06/11 13:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« さくら学院の新戦力 | トップページ | 仮想世界で形作る理想像 »