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2013/01/07

深淵に宿る炎

BABYMETAL

綻び。それは、ほんの些細な契機となり、全てを巻き込むようにしながら、より良い方向へも悪い方向へも運命を絡め取ってゆく。
思いもしなかった事態に遭遇した時に、抗えぬ運命の逆巻きに身を沈めている事実に、ようやく気付くことが出来る。人は自らの生を実感する瞬間にこそ、同時に死を、生々しい感触として心根の深い部分に刻み付けることが、ままある。
この身にも、そんな瞬間が確かに与えられた。

父が急逝した。呆気にとられるほどの、突然の死であった。意識を失くした父は、僕が駆けつけると間もなく息を引き取った。まるで、僕が来るのを待っていたかのように。
嵐のように過ぎた時も、いつの日にか終わりを告げる。そんなありきたりな言葉がしっくりくる、思いもしない出来事。
あらゆる意味で家族を掻き乱し、様々な摩擦を引き起こしてきた父の存在。身体だけは頑丈な父が、突如死ぬことなど有り得ない。
この時僕は、抗いきれない運命の力を、全身にひしひしと感じていた。

近年、僕の心を揺るがすのは、生命力溢れる美少女とパワフルなサウンドのコラボレーション。いわばそれは、生身の嘘偽りなき生命の存在感に、絶妙なる人工的な演出を加味した、心の奥底を刺激するカンフル剤である。
もう何度も、BABYMETALの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」をリピートしているが、炎が立ち上る演出の部分でいつも身震いしてしまう。メタルの迫力ある曲調が最高潮に差し掛かり、幼い少女に秘めたエネルギーが噴出するかのように思えて、グイグイと引き寄せられる。
これほどまでに強烈なインパクトを感じたアイドルユニットは、もしかすると初めてかも知れない。
地上波放送の露出も徐々に増えてきているが、ライブ感の演出効果が足りず、単なる色物アイドルと見られがちな傾向がある。もう少し照明やセットを工夫し、独自の魅力をアピール出来るよう配慮して欲しい。

躍動する生命の姿に惹かれることの裏には、いつでも死への思いがある。それは最早、渇望といっても差し支えない。
ただ、自殺者の気持ちと裏腹に、最後の最後まで生きようとする肉体の意志があるように、身体の奥底で燻る灯火が、時折燃え盛ろうとする瞬間があるのも、また事実である。
その炎が訴えるのは常に生であり、死や無とは無縁のものだ。そして、生は有限であり、死は無限であるはずなのに、その炎を目にする一瞬だけはどこまでも生命の海に満たされ、無限の広がりを確信する。
永続する時間軸でさえも押し退けて、生と死の狭間で我を忘れさせる唯一のもの。それが、僕にとっての美少女アイドルなのだと、今ようやく知り得た。
BABYMETAL

過去、そして現在、未来。どんなに切なる願いを叫んでも、時の壁を越えてまで、その悲痛なる叫びが胸に届くことはない。
何かを変えた。いや、変わってしまった現実を直視することは、今日まで生きた足跡を、投げやりに深い闇へと葬るようなものなのか。
限りなく渦巻いてゆく内なる深淵に身を投げ出す時、そこに揺らめくものがあるのなら、それは魂の発する炎の息吹
こんなにも、熱くてやるせない生命の証し。運命を変えてしまうほどの途方もない力を、今はっきりと感じている。

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