バトル・オブ・アイリーン
第二次大戦ヨーロッパ戦線において、領土拡大を進めるドイツ第三帝国の破竹の勢い。対外強硬策に固執するファシズムに駆られた好戦的野心をもって、高い軍事力を有機的に運用し統制された軍を持つ同国は、まさに戦争のエリートと呼ぶに相応しい。
避けては通れないイギリス本土上陸作戦を前に、制空権の確保を目的とした戦史に残る一大空中戦が、バトル・オブ・ブリテンである。
ハロープロジェクトキッズの中でも、抜きん出るセレブリティな家庭環境と、高い歌唱技術を併せ持つ鈴木愛理(アイリーン)は、次代を担う正統派アイドルのエリートといって何ら差し支えない。
清楚な顔立ちに困り眉、ユニセックスな細身の肢体が元祖プリティ。本人でさえ意識しないまま、熾烈な戦場へといざなわれるのは、王道をゆくプリティアイドルの宿命。
アイドル界の眠れる怪物こと、嗣永桃子の覚醒に導かれるように、頭角を現してきたアイリーン。王道ど真ん中を、天然不思議系キャラという絶妙なエッセンスを加えて進軍するその姿は、烈火の如く突き進む第三帝国を彷彿とさせる。
アイドル性と才能に恵まれた故に、戦いに明け暮れた半生。我々の脆弱なる魂を惹き付ける、したたかな生き様を振り返ってみたい。
天性の技術力
歌唱力を競う上で欠かせないライバルとなった夏焼雅との競演、「あぁ!」における完全勝利。リーダー田中れいなを差し置いて、ほぼセンターを確保。見かけの幼さと相反する、高次元の歌唱力をまんまと見せつける結果に。この点、元々大人っぽい雅ちゃんは、今ひとつインパクトに欠けた印象が否めない。
唯一ソロでの底力を披露したといえる、ハロプロアワーでの「ブギートレイン'03」。華奢過ぎる身体に秘めたポテンシャルを、体感するには十分。僕にはこれが、電撃戦におけるシュツーカ急降下爆撃隊(悪魔のサイレン)を連想させた。
ポスト桃子の大本命
一部ファンに「媚び」ともとられるまでの、プリティアピールの数々。公式写真でのポージング、聖子ちゃんカットなど、プロ意識では及ばないものの、怪物(桃子)にひけをとらないアピールを連発するアイリーン。
暇さえあれば鏡を気にする辺りにも、自身を客観視しようとするプロ意識の片鱗が垣間見える。特筆したいのは…握手会等で見られる、困り顔から繰り出す、すがるような独特の視線。
いつの間に虜にするあの力は、Uボートによる通商破壊作戦に似て非なるものがある。
見せかけの同盟関係
年齢差のある℃-ute内では、一見して年長年少組が二分して構成されているかに見える。実力から推し量る力関係を言うならば…前衛の中核を成す村上愛(めーぐる)脱退までの間は、めーぐる、矢島舞美(まいみぃ)、愛理の3トップが順当。めーぐる亡き後、アイリーンの存在価値が飛躍的に拡大したのは確か。
当然、後衛に甘んじる他メンバーは面白くないだろう。かつての盟友、中島早貴(ナッキー)ともやや疎遠な傾向。日独伊三国同盟を思わせるキューティーガールズ内でも、岡井千聖、萩原舞(マイマイ)にそれとなく疎外されている!? ラジオなどでも、岡井ちゃんに「あまり喋らない」と言われて動揺する愛理が象徴的だ。それならばと、同じく不思議系の要素を持つ栞菜に接近するアイリーンが、至極したたか。
バトル・オブ・ブリテンで敗北を喫したドイツ第三帝国は、戦争終結の決め手を失い、開けてはならない東への扉を開ける。
泥沼の様相を呈する戦いは、帝国崩壊を時間の問題とした。
類い稀なる空中戦を制したのは、地の利を活かした大英帝国。アイドル王道を歩むのならば欠かせないのが、確固たるプロ意識と、競い戦う鋼の精神。地に足のついた戦略だけが、真のアイドルへ続く橋頭堡となる。
バトル・オブ・アイリーン。一人の少女が志す険しい戦いの道のりを、アイドル新時代への憧憬を胸に刮目せよ。
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